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5年目!メンバー全体会議の報告

独立映画鍋メンバー全体会2016


2016年7月16日(土) 
15:00~18:00 
@下北沢アレイホール

独立映画鍋も5年目!


 2012年7月のキックオフ・イベントでスタートした独立映画鍋が、ついに活動5年目に突入しました。継続は力なり、メンバー数も149名(8/9現在)まで増えました。
 鍋講座で学び合い、打ち上げで親交を深め、メンバー・メーリングリストでやり取りが行われる一方で、映画鍋の実務は、月一回の「運営ミーティング」で事が運ばれてきました。運営ミーティングは誰が参加してもいいオープンな場ですが、2時間の会議時間は目先のイベント準備をめぐる些細な(「あのケーブル、どうなってたっけ?」的)実務整理に費やされてしまうため、映画鍋の大きな方向性をまじめに語り合う機会が求められていました。
 2年前の2014年5月も「鍋オールスターズ」と題する全体会をもちました。
レポートはこちら→ http://eiganabe.net/2014/06/02/828
 あれからメンバーの顔触れも変わってきた今回、また久しぶりに「メンバー全体会議」を開催することになりました。以下は、その経緯と報告です。

映画鍋は、一体どこに向かっているんだ?


 メーリングリストとはおもしろいもので、ふだんは会員の告知情報と業務連絡がぽつりぽつりと穏やかに流れているのが、ときおり誰かのアツい檄文で炎上することがあります。2016年の春から、「映画鍋で○○の抗議声明文を出さないのか?」「政策提言なんて言ってるけど何もしてないじゃないか」等、映画鍋の活動の大きな枠組みに対する問題提起が浮上して、オフラインでも議論となっていました。
 そこで久しぶりに、広くメンバーたちを集めた全体会議で、鍋の今後の活動の方向性を改めて考えることにしました。まずは、会議の議題と進行方向を考えるための材料を集めようと、メーリングリストでアンケートを呼びかけました。募集は4/22に開始し、締め切りは5/13としました。

〈アンケート〉


▲ 質問1
あなたが映画鍋に入会した理由は何ですか?
▲ 質問2
あなたは映画鍋にどんな活動を期待しますか?
▲ 質問3
あなたは映画鍋という場で何をしたいですか?

アンケート結果が出ました!


 そして結果です。メンバー数132に対し、回答数50。以下の通り、集計しました。
入会の理由
(a) 情報と人的ネットワークを得たい 32
(b) 独立映画を支援したい 9
(c) 鍋講座がおもしろい          6
(d) プラットフォームが必要だと思った 4
(e) 設立趣旨に賛同          3
どんな活動に期待?
(a) これまでと同様の活動を継続的に 20
(b) 会員同士の交流・情報交換・助け合い 17
(c) 政策提言、仕組みづくり 6
(d) 団体として映画業界に貢献すること 5
(e) 映画制作、上映会等の実践活動 3
(f) コンサルタント業務 2
(g) 首都圏と地方の格差をつなぐ 2
(h) 情報の集約化、発信 2
あなたは何をしたい?
(a) 人との交流・情報を得たい、参加したい 28
(b) 役に立ちたい          13
(c) 会員連携の映像制作や企画 3
(d) 地方からの発信 1

【全体のまとめ】


 すべての項目に渡って「情報を得たい、人と交流したい」という声が圧倒的に多い。独立映画に関係する「人と情報の集まる場」が求められている。それは「これまではひとりで学んできたが、広くつながることで自分を高めたい」「個人や小さな団体でも情報やノウハウが行き渡るようにしたい」「横の繋がりに期待」という、デジタル時代の映画製作・上映者の生の声の表れで、「映画業界の縦社会」「閉鎖性」への批判として捉えられる。
 これまでの映画鍋の活動への讃辞とエールが多いのが印象的だ。特に鍋講座の評判が高く(「画期的」)、サイト上のレポート公開も含め、末長い継続が希望されている。
 その一方、自分で積極的に何かを動かすよりは「参加する」「サポートする」という受け身の態度が大多数。「役に立ちたい」「貢献したい」という声は実は少なくないが、その思いの着地点が見えないのでは?と回答結果から読める。かねてより予定されている会員情報の公開への要請もあった。
 また、団体として映画業界にどう貢献するか、どう行政に政策提言をしていくのかという問題を何人かが上げている。これまでの活動を新しい「仕組み作り」に集約していくべきでは?という言及が見られた。設立当初に掲げていた「インディペンデント映画の苦境を改善しサポートするシステムを作る」という問題意識・設立趣旨への賛同など、映画の多様性を守るための環境改善も一部の人の意見として上がっている。
 映画鍋の運営班の負担の大きさを懸念する意見も散見された。無償奉仕ではこれ以上のことはできないことへの言及、実働部隊の労へのねぎらいが感じられ、無理をするよりは「今のまま長く継続してほしい」という声が複数見られた。
 一方で、有償の「コンサルタント業務」「情報の有償化」等、鍋が営利活動を行なう、という方向性はありえるだろうか? という提案も。話し合ったことがないので、五年目のひとつの議題としてもいいかもしれない。(文責:藤岡)

会議の進め方はどうする?


 大雑把に言うと、今の独立映画鍋に対するメンバーの満足度は高い、というアンケート結果でした。そのことが大多数の声として上がったことは、中心で活動しているメンバーにとっては、結構うれしいことでした。
 そして、アンケートの集計と分析から編み出されたさらなる課題を議論するために、次の項目をベースに、全体会議の当日を進行することになりました。

新たな五年間に向けて。これからの映画鍋の三本柱


■ 人と情報が行き交いするプラットフォーム(駅)
・<リアル世界>「鍋講座」以外に、どんな【駅】が建てられるか?
・<ネット世界> 情報交換を活発にする為には、どんな【駅】が必要か?
■ 情報の格差を是正するナレッジベースの構築(倉庫) 
・どんな【倉庫】が使いやすいか? 何を収蔵するのか? 誰がやるのか?
■ 環境改善のために社会へ発信(メディア)
・発信する「私たち」は誰なのか? 何をどう発信するのか?
★「三本柱」を進める為に
・ボランティアの限界は、克服できるか?
・考えられる営利活動は? 運営体制はこのままでいいのか?

 今読み返すと、「駅」というメタファーを使うなら「車庫」と「列車」にすればよかったかと思えますが…。とにかく、このような三本柱を仮に置いてみよう、とメンバーに告知がされました。
 そして当日の運営は、まず共同代表の土屋豊さんと深田晃司さんによる20分程の基調報告から始め、次に5~6人のグループに分かれて2時間ディスカッションし、最後に各グループの報告とまとめをする、という大きな流れを予定しました。

いよいよ当日です!


 7/16土曜日の15時スタート。普段運営ミーティングやイベントにあまり参加していない人、久しぶりに顔を見せた人、姫路や名古屋から駆けつけた人、直前に入会したばかりの人など、30人以上のメンバーが集まり、最初は少し緊張した雰囲気でした。
 基調報告では、独立映画鍋の公式サイトに掲げられている活動内容に沿って、何ができているのか、できていないのかを土屋さんと深田さんがひとつひとつ確認していきました。クラウド・ファンディングをするメンバーのサポート、認定NPOの資格を取得すること、サイト上で公開されている「役立つ情報」の更新、業界実態調査や政策提言。やる気があっても人手と労力が不足している、実務負担を担うメンバーが固定化しているなどの問題が見え隠れします。普段から運営ミーティングを進めている共同代表の二人が語ると、どうしても辛口な自己評価に向かってしまうようです。
 次は5つのグループに分かれ、事前に決めていたファシリテーターの進行に従い自由討論が始まりました。ファシリテーターには、普段あまり活動の中心にいない人も加わり、各チームとも新鮮で活発な議論が繰り広げられました。「これからの映画鍋の三本柱」に沿って話を進めたチームもそうでないチームも、やってみたいことのプラン、組織や運営についてのアイディア、映画鍋のアイデンティティについても話に熱がこもっていきました。
 会の最後は5グループがそれぞれ話し合ったことを皆の前で短く発表するという時間です。その内容をレポートにまとめたものは、メンバーのメーリングリストで共有されるので、詳細について知りたい方は独立映画鍋に入会していただくとして、ここでは私(藤岡)の雑感を。
 実にたくさんの(夢かうつつか…)提案が出ました。例:鍋講座レポートの書籍化、地方で鍋講座開催、上映もできる事務所拠点を作る、会員データベースをまとめる、鍋マークをメンバーの映画チラシに入れる、有給スタッフを雇う、見栄えの良くないウェブサイトを改善、お見合いパーティ、インディペンデント映画の存在意義を戦略的に語る、会員用掲示板を作る、会員限定でメンバーの映画作品を見られるウェブサイトを作る、等々。
 これらの幾つかは、全体会から一か月たった現在、既に動き出しています。頼もしいものです。そして、これまで運営の中心メンバーでなかった人たちが、プロジェクトを立ち上げたりミーティングに参加し始めました。
 ほとんど初めて顔を合わせる人たちが、ボランティアで入会している互助会への思いや希望を語り合うという場は、なんだかとても純粋で、映画の初心に帰るような緊張と興奮と、前向きな空気に満ちていました。「これだけ異なる立場のおもしろい人ばかり集まってて驚いた」というコメントが、あるグループ発表者から聞かれましたが、「何かと出会いたがってる人たち」が集うことのエネルギーと、可能性への期待はまさに「お見合いパーティ」のような高ぶりを見せてくれました。
 果たしてお見合いがデートにつながり、婚前旅行や、実際の子作りにつながるかは、まだ未知数ではありますが、この日の会の終了後、打ち上げが一次会、二次会にとどまらなかったことは確かなようです。実り多き2016年の独立映画鍋・全体会議でした。この10日後、鍋講座「カンヌ国際映画祭報告会~映画「淵に立つ」受賞を受けて」が大会場ユーロライブで大盛況のなか開催され、映画鍋の意気込みは今年の猛暑に匹敵する熱さの2016年の夏です。
(執筆:藤岡朝子)

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