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設立趣旨(2012年)

 現在、日本映画の現場では極端な二極化が進んでいます。中規模の映画が減少し、興行収入の大半を限られた大手メジャーが占め、インディペンデント映画の低予算化は歯止めが利きません。一方で、知名度の高い漫画・小説の原作映画や、見慣れた有名俳優に依存した映画ばかりがスクリーンに届くアンバランスな状態が続いています。これらははたして私たち映画に携わる人間が本当に望んだ状況でしょうか?

 自分の意志を貫こうとするインディペンデント・フィルムメーカーの熱意と、彼ら彼女らの貧困に耐え忍ぶ精神力が、日本の映画が押しやられて行くこの状況をかろうじて食い止めています。しかし、その熱意と精神力にも限界があります。自分の生活、あるいは人生を犠牲にして一本の映画を作り上げるということは、決して美談ではなく、文化の貧困です。映画の多様性を確保する為には、一個人の忍耐力に頼るのではなく、公共的なサポートが必要なのです。

 そして、公共的なサポートのより一層の充実が進み、新たな映画製作/上映環境が現実になれば、それはインディペンデント・フィルムメーカーの置かれた苦境を改善するに止まらず、ときに不本意な映画作りを余儀なくされる大手メジャーの現状を変化させるきっかけにもなるでしょう。当然、多様な映画を作り届けることは観客の利益にも繋がります。

 私たちは、このような理由からインディペンデント・フィルムメーカーと上映活動に携わる多くの人々、それらを取り巻く環境をサポートするシステムを作りたいと思います。メジャーとインディペンデントの対立的な二元論に陥らず、人、情報、資金を結びつける公共的・持続的なプラットフォームを構築することが、今求められています。

 一人一人の多様な価値観を映画という表現媒体で発信すること。そして、その表現をより多くの人が享受できる土壌を整えること。私たちはそのようなことが可能な社会を望みます。映画の多様性の創出とは、世界の多様性に触れられる場を社会に提供することでもあり、ひいてはグローバリズムに対抗する「新しい民主主義」の可能性を広げる公共的な財産であると信じて、私たちはここに「独立映画鍋」を設立します。

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