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鍋オールスターズ報告レポート

鍋オールスターズ 報告レポート


◆ 2014年5月11日(日)15:00~17:10 下北沢アレイホール
2014年5月11日(日)15時から、下北沢のアレイホールで行われた独立映画鍋会員100名記念【鍋オールスターズ】の模様をレポートいたします。当日の鍋オールスターズ参加者は、途中参加や交流会からの参加者を含めて40名。

当日の流れは、
Ⅰ.15時10分~15時40分 趣旨説明、映画鍋の組織体制について (土屋豊・深田晃司 両代表理事より)
Ⅱ.15時40分~16時40分 3つの分科会にそれぞれ分かれて討論
 ◎ 上映・配給系 (司会進行:藤岡)
 ◎ 助成・資金調達系 (司会進行:土屋)
 ◎ 政策提言系 (司会進行:伊達)
Ⅲ.16時40分~17時10分 それぞれの分科会のまとめ共有
その後、近所の中華料理屋へ場所を移して、希望者のみ23時くらいまで〈会員100名記念飲み会〉
となりました。
Ⅱの時間帯になってからは、私は③に参加しながら、遅れて来られた方の対応を行っていたので、それぞれの分科会で内容や補足などをML(メーリングリスト)であげていただけると更に内容が深まるのではないでしょうか。①の詳細な内容に関しては、鍋会員の山口さんが既に映画鍋MLで詳細なレポートをあげて下さっています。

《鍋オールスターズ開催にあたって》


そもそも、今回の「鍋オールスターズ」は、映画鍋キックオフからほぼ2年、2012年10月の鍋オールスターズ(参加者15名)から1年半程経ってみて、月一度の事務局MTGで振り返った時に次のようなことが議題にあがったことが発端でした。
何となく映画鍋の進む方向が見えてきたような気がする。しかし、その運営を担当する事務局メンバーの人数や動ける時間に限界があり、「やりたくてもできないこと」が増えてきた。映画鍋はサービス業ではなく、会員同士の互助会であることを再確認しよう。事務局とは別に分科会のようなグループを立ち上げ、そこに多くの会員に参加いただきたい。月一回やっている鍋講座で、何をやりたいのか?会員の興味は?
そのため、鍋オールスターズ開催前に、事前に会員へ当日の出欠と〈鍋講座で取り上げて欲しいテーマは何ですか?〉〈映画鍋自体が助成金を申請するとしたら、どんな事業で申請してみたいですか?〉というアンケートを投げかけたところ、出欠に係らず、多くのレスポンスがありました。
当日までの間、事務局MTGや事務局MLで、どのように進めるかという話合いが何度も交わされ、当日も13時半に事務局メンバーが会場に集まって、事前の話合いを行いました。用意したレジュメに沿った進め方で問題ないか?から始まり、ホワイトボード的な紙をどういう風に使用するか?椅子の並び方は?等々。
私が事務局MTGに参加してから、半年になりますが、事務局の皆さんの真剣さというか真面目さに毎回、心が打たれます。意見を交わすことによって、少しでもいいものにしていこうという姿勢が映画の現場を経験されている人達だからこそ貫かれているように感じます。
当日の話合いの中で、アンケートの回答を元に土屋監督が整理、分類した結果から、集約して3つの分科会に分かれて討論を行うことに決まりました。しかし、趣旨説明をした後にすぐに分科会に分かれるという意見と、趣旨説明や組織体制について意見を求めて、その後に分科会に分かれるという意見とでびしっと意見が分かれました。私自身は、すぐに分科会に分かれるとしたら、参加している会員の中で温度差がある(すぐに動きたいという人もいれば、動きたくても、手一杯で動けないという人まで)と思われるから、戸惑う人や強制的に感じる人が出てくるのではないかと考えていました。
しかし、この対立があったおかげで、折衷案として、上記の流れになり、分科会も予想以上に盛り上がったように思います。

《事務局メンバーとは?》


最初に代表理事の土屋豊監督より、「趣旨説明の中で事務局メンバーと言っても選ばれた特別な人でなく、鍋に具体的に関わりたいと思った人が参加している(主に毎月の事務局MTGで話し合ったりチラシの折込をしたり、鍋講座でスタッフをする)ので、手伝う人募集中!と宣伝。
映画鍋は、2012年7月にキックオフしてから2年経過。その間、月1で鍋講座を開催してきた。2年活動をやってきたので、どんな方向を目指しているのか見えてきた気がする。
今年3月の【鍋講座vol.15】世界の映画行政を知る③日本編で文化庁からのゲストより、「独立映画とは?」「独立映画の成功とは、どういった形か?」という問いかけがあった。そのことを映画鍋としてやるには、月1回2時間の事務局MTGでは話しきれないのが現状で、政策提言の分科会を作っていきたいとMTGで話してきた。今後の組織運営をどうしていくのか?互助会的に情報を持ち合いサポートし合うのが鍋の趣旨というのを再確認し、共有したい。今ここに集まっているメンバーは、どのように考えますか?」
続いて、代表理事の深田晃司監督より、「2年間毎月鍋講座をやってきたのは良かったと思う。鍋を手伝ってというよりは、皆で意見を出し合って、せっかく映画監督や配給の人や観客の人もいるので、そういった意見をくみ上げられる分科会にできればいい。皆がうまく映画鍋を利用して、やりたいことをモチベーションを持って関わってもらえればと思う」
鍋会員の中からも、積極的に意見が出された。
「昨年の秋から、事務局MTGに参加しているが、鍋講座で何か議題にあがっても実際には1年近くかからないと鍋講座が開催できないのが現状。月に1度の鍋講座では少ない。2時間のMTGで、1時間は次の鍋講座について話し合っていて終わってしまう。今の事務局の体制では出来ることが少ない。会員の中でもやりたいことを持っている人はたくさんいると思うから、どうやったら、それが具体的に実現できるのか、考えていきたい」
「以前の鍋講座で政府関係の人がきた時に、政府に対する陳情大会になったのに幻滅した。分科会が一番いい方法なのかは分からないけれど、フラットに意見交換をする場が必要だと感じていたので、今回は貴重な場だと思いました」
「それぞれアップアップな状況なのに、このメンバーの中で政策提言や大きなことをやっていけるのか?鍋は、ざっくばらんに色々な人たちが交流する場と思っていた。政策提言するなら、大学の先生とかでないと出来ないのでは?現場の人だけではやり切れないと思う。新しいブレーンを入れていくのが必要では?」
それを受けて、土屋監督は「皆が集まって意見を出しながら持ち帰って、それぞれがやんなきゃなぁと思いつつ、誰もやらずに終わるというまま、すぐに10年20年が経ってしまう。誰かがやらないと!というのが僕の中にはある」と語った。

《3つの分科会に分かれて》


その後、それぞれの興味を持った分科会に分かれて約1時間の話合いが行われました。会場に入った時に、胸に名札をつけてもらいましたが、簡単な自己紹介の後、意見交換が始まりました。
遅れて参加してきた会員にはそれぞれ説明をして、希望の組に入ってもらいました。面白いことに、人数はほぼ3分の1ずつに分かれ、そして、自分の興味のある話と違うと思うと椅子を持って移動するという様子がいくつか見られました。
一番、盛り上がって笑い声が多く聞こえてきたのは、①の上映・配給系でした。私の参加した③の政策提言系では、「映画は商売か?芸術か?」から、「政策提言の文章はどの位のボリューム(A4で何枚など)が必要なのか?」といった具体的な話まで出てきました。意見や質問に対して、知識が返ってくるといった形が続き、有意義な時間になったと思いますが、具体的にどうしていこうという話には1時間では至りませんでした。
今回の分科会を受けて、私個人としては、以前より漠然と考えていた「現場の声を拾いつつ、日本映画やインディペンデント映画を取り巻く環境や現状についての客観的な分析や提案をコンサルタントに伺ってみたい」という気持ちが強くなりました。そんなことが出来る人が本当にいるのか分かりませんが・・・。そして、最初に意見にも出た、政策提言を作っていくブレーンが必要だと思いました。

《分科会のまとめ》


それぞれの分科会司会進行より、5分ずつ話し合われた内容の報告が行われました。

上映・配給系

 
◆上映や配給に関しては、非常に困難と言う話もあるが、ドキュメンタリーの中では成功例もあるのでは?コミュニティつくりは、コアな客層の特殊な事情もあるが、成功している。
◆ドラマを創っている人の方が困難。創ってみたけど、どうしたらいいか?という時にアドバイスを鍋の中で、共有できるのでは?
◆創っちゃったから公開しようではなく、創る段階から公開を考えていく。
◆モニター試写を映画鍋が主催して、皆で配給や上映についてサポートしあったり、組織力を使って配給の人にも参加してもらうことによって、鍋の試写会の価値が高まっていくのでは?
◆劇場公開にこだわらないで、自分達で上映をしていく配給方法があるのでは?ブルーレイを使っての自由な上映。その為に、映画鍋ではネットワークの中継点の役割ができるのでは?クラウドミーティング。鍋会員の中の情報共有。
◆海外マーケット。政府のサポートはあるが、コストもかかるし、難しいねということで話はしぼんだ。
◆『トークバック』が今、地方展開を市民サポーターみたいな人を中心に既存の映画の配給システムではないものを作り上げようとしている。ゲリラ的な動きが可能性として繋がるのではないか。
◆創る人だけでなく、観る人と繋がる観る機会を作っていく。映画鍋主催の上映会。
◆作品のアーカイブ。配給会社がいない作品でも、必要に応じて表に出していけるもの。

助成・資金調達系

 
◆クラウドファンディング自体で、○○が必要とかはないのでは?細かいマル秘情報を共有できるといいのでは?
◆寄付税制の為に、鍋独自のクラウドファンディングができるといいのでは。
◆鍋自体の事務所を安く長期で借りて、レンタル用のスタッフルームにする。
◆海外展開をどういう風にやっていけばいいか⇒もう少し具体的に絞ったことを鍋講座でやっていく。

政策提言系


◆先ず、なぜそういう話合いをしなければならないのか?⇒文化庁も経産省も日本の映画産業には、問題はないと考えている。問題があると考えるなら、自分達で問題提起をしていく。
◆創る側の意見だけではなく、見せる人、教える(研究する)人を含めて考えていかなければならないのでは。
◆個人の欲望(創りたいから金をくれ)だけでは説得力はなく、豊かな映画を創りあげていく為の全体の土台作りに力点を置いていかなければならないのでは?
◆行政や国民に対して、商業としての側面で迫っていくのか?芸術文化としての側面で迫っていくのか?
◆昔と違って自己資本で創れる時代なのに、なぜ助成が必要なのか?議論を組み立てていく必要がある。
◆企画開発費に対する助成がない状況で、助成する意味=説得力を獲得しないといけない。
その点、演劇はある程度、成功している⇒子供達がコミュニケーション能力を高める為に演劇が最高という説得力。
同じように映画でも言えないのか?⇒疑似体験・追体験をたやすくすることが出来るツール。多様な価値観を体験して、国際化を獲得。
◆最終的にどこに提出するのか?いつまでに?レポートは誰が作るか?

《鍋オールスターズが終了して》


最後に土屋監督が、「始まる前に1時間半ぐらい進め方を話し合って、もめたのがいい具合に転んで、かなり成功したと思います」と話すと笑い声がおこり、会場全体から拍手がおこって、鍋オールスターズは、いい雰囲気で終了しました。
椅子を全員で片付けた後も、その場で会員同士で話がはずんでる様子があちこちで見られ、そこからも、今回の鍋オールスターズは、成功したのではないかと思われました。
その後、いつもの中華料理屋で、4時間に及ぶ交流会が続けられました。最初はテーブル毎に大人な会話が続けられていましたが、数時間後からは、お店の中で各々が自由に移動して、それぞれに会話や討論を続けている姿が見られました。いつもの飲み会より、長時間の為か、酔いがまわりはじけていく人が増えていきましたが、個人的には素面の時には聞けないような貴重な話が伺えたのと、これまであまり話す機会のなかった人と話をすることができたことが収穫になりました。
更にその後、話し足りない(飲み足りない)人たちは、新宿のゴールデン街に消えていったそうですが・・・こういった鍋会員同士の交流の中から、次なる映画や新しい動きが出てくるのではないかと期待して、筆を擱きます。(文責:大原とき緒)
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